「…過去のことからよく他人を見るようになって…先輩は他の人とは違うって」
彼女が顔を上げる。
凄く穏やかな笑みを見せる、彼女の姿があった。
「…この人なら…信じられるかもって思ったんです。先輩は気付いていなかったけど…ずっと先輩を見てました」
「…っ!」
予想外の彼女の言葉に恥ずかしくなった。
頬を腕で隠すが、きっと真っ赤になっている。
彼女はただ、俺のことを利用しているだけだと思っていた。
同じような悲しみを癒そうと、俺の傍にいたいんだと思っていた。
だけど…それは違った。
彼女は純粋に俺のことを見ていた。
俺よりも真っ直ぐな想いで。
俺が利用しようとしているのも気付いていたはずなのに。
それでも…傍にいたいと願った。
「…好きじゃなくていいんです。ただ…傍にいさせてください」
願うような彼女の口調
彼女は俺にゆっくりと寄りかかる。
俺は…どうしたらいい?
俺の気持ちは…想いは…
「俺は…」
この気持ちをどうやって伝えればいい?
彼女はじっと俺の言葉を待っている。
俺の…想いは…
「……少しだけ、聞いてくれるか?」
俺はゆっくりとその場に座る。
凌花も床に座り、俺の肩に寄りかかる。
俺はひとり言のようにぽつりと話し出す。
俺が抱えている、過去を……。

