「はぁ…はぁ…」



「……先輩も私から離れていくんですか?」



屋上に息を切らしながら入ると、目の先に彼女がいた。
悲しそうな一目で俺を見つめながら、ぽつりと呟く。



「離れたいから、離れるわけじゃない」



「…でも、離れて行くんでしょう?」



離れるわけじゃない。
俺は…自分の想いを知りたいだけ。



過去を…乗り越えて…
悲しみを忘れるように過ごすだけ。



「…俺だけがすべてじゃない」



俺がそういうと、彼女はぶんぶんと首を横に振った。
「…違う」と小さな声で呟く。



「…あたしを見捨てないで。貴方の…傍にいさせて。隣にいたい。こんな気持ち…初めてなんです」



彼女の気持ちは俺に対する恋心?
ぽろぽろと涙を流す彼女の本心が分からなかった。



「…先輩の傍にいたいです」



彼女の頭が俺の胸にぽすっと収まる。
泣いている凌花の背中を俺は撫で続けた。
彼女の涙が収まった頃、俺はぼそっと尋ねた。



「…何で俺なんだ?」



凌花はふふっと笑みを浮かべながら、ぽつりと話し出す。



「…先輩は気付いていないと思います。あたしが…ずっと貴方を見ていたこと。入学した時から…貴方を見ていた」



「…俺を?」



それこそ意外だった。
俺は授業に参加していないから、1年で知らない子も多いのに…
入学式のときも、俺はサボっていた。
いつ…俺を見たんだ?



「…入学式の日、あたしは中庭で先輩を見たんです。悲しそう…だけど優しげな瞳。近づいてきた女の子に笑いかけている姿が強がって見えた。けど…同時に優しい人なんだと感じたんです。この人は…きっとわたしを裏切らないって」



「見た目じゃ…分かんないよ?」