「おはよう」




気付いたら俺は寝ていた。
しかも、灯の膝の上で。



「…悪い」



「本当だよ!って言いたいとこだけど、気にしなくていいよ」



と、灯は優しく微笑む。
灯から落ち着く優しい香りがする。



俺はゆっくりと身体を起こした。
大きく欠伸をしながら、ベッドから立ち上がった。



「…ちゃんと授業受けるよ」



「…無理しなくていいんだよ?」



と、灯は不安そうに言う。
その優しさが嬉しかった。



だけど、いつまでも甘えるなんてできなかった。
望さんも…灯も…凄く優しい。
思わず甘えたくなる。



だけど…もう、前へ進みたいと思ったんだ。
いつまでも…このままでいたくないと思った。



「…いつまでも子供じゃなねぇしな」



俺が冗談めかしてそういうと、灯はふっと微笑んだ。
『そうだね』と、少し嬉しそうに俺を見ていた。



「大丈夫!!那智のこと、皆大好きだから!ちゃんと受け入れてくれるよ?」



「灯もいるしな」



俺はポンッと灯の頭に手を乗せる。
灯はふふっと微笑んだ。



「じゃ、学校にいこっ!あたしがご飯作るからさ!」



傍に灯がいてくれることは心強かった。
前を進む勇気をくれたのは灯だと思う。
いつもそばで支えてくれて…。



だからこそ不安になる。
俺ばっかり、構っていいのかって。
灯には灯の道がある。
これ以上、巻きこんじゃいけないと思った。