夜が闇のように感じたのは、幼い頃だった。
怖くて、心細くても母親も父親もいない。
誰にも頼れずに、一人で怯えていた。



そんな俺の家に灯は毎日のように来ていた。
夜なのに…俺の家に泊まって…
母親に怒られても、懲りずに来ていた。



今思えば、灯は姉のような存在だった。
だから俺も、灯に素直に自分の孤独を打ち明けられたんだと思う。



俺は俺のベッドですやすやと寝息を立てて眠っている灯を見つめる。
そして、髪の毛をゆっくりと撫でた。



「…お前には世話になりっぱなしだな」



と、ぽつりと呟く。
灯が俺のことをどう思っているのかは知らない。
俺にこんなにも優しくしているわけも。



「…ありがとな」



いつも俺を支えてくれて。
こんなにも優しさをくれて。
ずっと…傍にいてくれてありがとう。



面と向かってはまだ言えない。
恥ずかしいし、照れくさいから。



でも…もう少し…
この悲しみを受け止められるくらい、強くなったら…



必ず、伝えるから。