「那智…今日も家に来る?」
「……いや」
さすがに連続で邪魔できない。
俺は首を振って断った。
すると、灯はふーんと何かを考えている。
そして、ふっと俺のほうを見て、微笑んだ。
「じゃ、あたし那智の家に行くね」
「あぁ。…って…は?」
一瞬、俺は灯が何を言ったのか理解できなかった。
もう一度聞き返すと、灯はふふっと微笑む。
「だから!あたしが那智の家、行くから」
「な、なにっいってるんだよ!」
「だって、那智の事心配なんだもん。別にいいでしょ?家、隣なんだし」
そういう問題じゃないんだけど…
俺ははぁーっと深くため息をつく。
灯は少し強引な時がある。
だけど…その強引さに今日は甘えようと思った。
「…なんか、ごめんな?」
俺が謝ると、灯は全く気にしていないと首を横に振って微笑んだ。
「幼なじみでしょ?あたしはずっと那智の傍にいるから。那智が辛い時や悲しい時は傍にいるよ?」
「…ありがとな」
幼なじみという存在が今は凄く嬉しかった。
小さいころからずっと一緒にいる灯。
楽しい時も悲しい時も常に傍にいた。
中学のころから自然に離れて行った。
それはきっと恥ずかしくて、からかわれのが嫌だったから。
灯もそれを理解していた。
必要以上に、学校では関わらなくなった。
だけど学校から帰る時、灯は昔と変わらず接してくれた。
俺のわがままを聞いてくれた。
父親も母親も帰ってこない家
真っ暗で静かな家に一人でいるのが、苦痛になっていた。
そんな俺を救ってくれたのが灯
今でもそれは感謝をしていた。
灯は嫌な顔一つしない。
俺の力になろうとして、傍にいてくれる。
それが心地よかった。

