「このままでいい」
「…じゃ、手短に言うわ。授業に出ることはできない?」
俺は溜め息をついた。
やっぱりそのことか、と。
「先生は知ってるだろ?」
「知ってるけど…他の先生は許さないの。学校にきている以上、最低限授業は受けなければいけないって」
「……嫌っていってもダメなんだろ?」
「そう。自主退学…ってことになるかも」
表情を全く変えないが、口調はかたかった。
俺ははぁーっと溜め息をつく。
「別に先生が気にすることないだろ?俺の問題だ」
「…那智君は学年で一番成績がいいから…先生たちから授業に出ろと言われて…」
「仕方がなく?」
「それは違うわっ!」
バンッと担任は教壇を叩く。
その手を見ると、真っ赤になっていた。
「仕方がなくじゃ…ないわ」
弱々しい声に追いつめているのは俺だと感じた。
「…望さんが気を負うことないだろ?」
俺は廊下に誰もいないことを確認してそう言った。
彼女は俺の母親の妹だ。
俺と血縁関係にある。

