偶然、窓のほうに目を向けた時に俺の姿を見たんだろう。
じゃなきゃ、こんな所に来るわけない。



俺は彼女に目を向ける。



彼女は何を考えているんだろう。
さすがに心の中までは読めない。
表情からも彼女の考えは分からなかった。



「…先輩、あたしが傍にいてはダメですか?」



「そういうわけじゃない」



ただ、不思議なだけだ。
彼女は誰とも話そうとしないと聞いた。
なのに、俺だけにこんなに話しかける。



何か企んでいるのかと思ったが…そうとは思えなかった。
彼女の笑顔は本物だと感じたから。



「何で…俺なんだ?」



俺じゃなくてもいっぱいいる。
彼女は目立つ容姿をしている。
きっと…いろんな男子から告白されただろう。



彼女はきっとそれを断って俺に近づいている。
『俺』を選んだ理由が分からないんだ。



彼女は笑みをふっと消し、俺の隣に座る。
暫く空を見つめながら、ぽつりと話し出した。



「…きっと、先輩なら分かってくれると思ったんです。あたしの悲しみを…」



空から目を離した彼女は、俺に目を向けた。
その目は凄く悲しそうだった。



「それだけじゃないんだろ?」



「…先輩はあたしと似ている気がして…だから…」



「悲しみを埋めようとしているのか?」



彼女はこくりと頷いた。
俺ははぁーっと溜め息をついた。



やっぱり…彼女は俺の事をなんとも想っていない。
ただ、悲しみを埋めようとする存在だった。



それが少し悲しい。
俺も彼女に会った時はそう考えていた。