俺のことを唯一、理解してくれているのが灯だった。
灯にはいっぱい迷惑をかけている。
なのに、灯はいつも笑顔を俺に向けてくれる。



灯は大事な俺の幼なじみ。
そして、大事な家族。
だから…これ以上、灯に迷惑かけたくなかった。



だけど俺は、灯に頼りっぱなしで…
今日だって、灯に助けてもらっている。
そんな自分が少し情けなかった。



もうすぐ授業開始のチャイムが鳴るせいか、人気の少ない屋上
俺ははぁーっと息を吐き、床に寝転がった。



空は俺の気持ちとは裏腹に晴天だった。
雲が蔽いかぶさればいいのに…と心の中で思ってしまう。



俺の心はきっと暗いんだ。
周りが眩しすぎて目を細めてしまう。



それは彼女の笑顔もそうだった。
初めて出会ってから…彼女の笑顔が頭から離れない。



同じような悲しみの匂いがするのに、彼女はそれを表に出さない。
悲しみを…周りのだれにも気付かせないようにしている。



きっと…彼女誰も信用してないんだ。
一人でいるのも…悲しみを知られたくないから。



何処か俺と似ている。
だから…悲しみの匂いを感じ取ったのだろうか?
彼女は俺ならいいと思ったのだろうか?



彼女の心は分からない。
きっと彼女も俺の心は分からない。



だけど…この胸の中で芽吹いている気持ちは…



「…先輩、サボりですか?」



気付けば俺の顔に影ができている。
目線を上に持っていくと、そこには彼女が俺の顔の覗き込むように見ていた。



「…それは凌花も、だろ?」



俺がそう言うと凌花はふっと笑う。
風が吹き、彼女の長い髪が靡く。



「…サボりじゃないですよ。先輩を見つけて後を追っただけです」



「それがサボりっていうんだよ」



棟が違うのに、俺を見つけるなんて変な話だ。
彼女はちゃんと教室にいたんだろう。