「……あれ、等価交換? なんか、甘ったるい棒ケーキみたいなあれが?」

「え?」


いきなりしゃべりだした梶原に、美奈と二人で視線を移す。
眠たそうに細めた目を擦りながら、口からえらい辛辣な言葉が出てきましたけど?!


「勢いに押されて引き受けただけで、お菓子と等価交換した覚えないよ。つーか、あれを菓子と呼ぶ恐怖」

「……珍しく長く話すと思ったら、言ってくれるわねぇ。梶原」

「甘すぎて、水で流し込んだ。あの後」


……中二で作るものなんて、完璧なはずないじゃん!



と、内心反抗しつつ。

そういえば友チョコあげた友達が、翌日私を生暖かい目で見てたのはその所為か! と、今更ながらに思ったり。
今は、もう少しまともなもの作れる……はず。


「まぁ、そんな事があった後に三年で同じクラスになったから、あんまり抵抗なかったかなぁ。梶原が懐いてきたの」

「……三島、脳味噌腐った?」


そのままふぃっとそっぽを向くと、再び眠りの世界に入ってしまいました。


「……寝逃げ?」

引きつりそうになる口元を押さえながらそう呟けば、美奈が興味なさそうに立ち上がった。
「懐いてきたんじゃなくて、勢いで懐かせたんでしょ。見てなくても想像できるわよ、その状況」
「え、美奈……」
「はい、発声始めるわよ! 集合」


あんたも起きなさい、と美奈に頭を拳固で叩かれた梶原は、不機嫌そうな顔を晒したまま鍵盤蓋を押し上げた。