そんな事を思いながらさらさらと髪を直していたら、どすんと私の頭に衝撃と重みがかかってびくりと体が震えた。

「なっ!」

内心焦って上を向こうとしても、頭に掛かった重み故に全く動けない。
梶原は片目だけ少し開けて、小さく息を吐き出した。


「馬鹿だよねぇ、そこの馬鹿」

馬鹿重なった!


けれどその視線が私の後ろに向けられているのに気が付いて、私も無駄な労力を使うのをやめてがっくりと肩を落とした。


「いい加減に腕どけてよ、山下!」
最後名前を呼ぶ時だけ声を強めれば、真上からのんびりとした声が下りてきた。
「肘掛がしゃべった」

あぁ、くだらない。
それに対して言い返す気力もなく、梶原の机に両手をついて盛大に息を吐き出す。
「はいはい、もう分かったから。重いんだってば、真面目に!」
振り払おうと手を上げれば、ひらりとそれを避けて私と一歩間をとった。
睨みあげれば、くんっと喉が伸びる。
一メートルくらいは離れているはずなのに、それでも山下を見上げるのは私にとっては結構大変。

少し離れようと後ろに足をずらせば、戻ってきた掌が私の頭を掴んだ。
文字通り。


「ちっちゃいでちゅねー、三島ってばぁ。成長期ですか? あ、もう終わったんでちゅかー」
「くっ、あんたってば毎日毎日っ!!」
叩きたくても、私の腕の長さじゃ山下に届かない。
改めて意識する身長差に、どきりとする自分が恨めしい。
言った通り、毎日の事だっていうのに!


山下はニヤニヤ笑いながら、ぽんっと私の頭を押しやると席に鞄を置いて他のクラスメイトのいる所へ行ってしまった。