好き。きみが、すき。

「っはよー」
翌朝、正門を抜けた所で前を歩いていた美奈に声を掛けた。
「おはよう。ねぇ璃子、私と賭けしない?」
振り向いた途端にやりと笑った美奈の笑みに、何かこう、うすら寒い雰囲気を感じるのはなぜでしょうね。
思わず引きつった頬を片手で押さえながら、美奈に続きを促す。

「昨日の今日でしょ? 多分絶対10はくだらないと思うのよね」
「は? 10?」
指折り数えるその意図が分からずおうむ返しのように問い返せば、昇降口について上履きに履き替えながら美奈は鞄を持ち直した。
「梶原の餌付けに、何人挑戦するかって事」
慌てて上履きを履きながら美奈の後を追いかけて、横に並ぶ。
「何言ってんの、美奈。まさか、昨日の話を真に受ける人なんていないよ」
すれ違う友達に声を掛けながら教室へと向かう。
「じゃあ、璃子は0ね。負けたら言う事一つ聞く事。何にしようかしら」
既に勝ったつもりでいるのか、楽しそうにあれこれと口にする。
「ちょっと待ってよ。私、賭けに乗るなんてまだ言ってないって!」
「はいはい」

そう言いながら教室に入った私達の反応は、正反対だった。