好き。きみが、すき。

私が見ていることに気が付いたのか、一瞬踵を返しそうになった山下はもう一度私の方を見て片手で自分の耳をふさいだ。

「?」

口を動かしているけれど何を言ってるのかよくわからず、ベランダの柵に手をついて首を傾げる。
すると、


「お前の声だけうるせぇ!」


……叫びやがった。


「今のあんたの方が煩くて目立ってんでしょ?!」
かぁっと頭に血が上って、声を張り上げればこれ見よがしに両耳を押さえられて。

「ちびっこが頑張りすぎると、ベランダから落ちるぞ! 丸いし!」
「煩いな、ウドの大木!」
「言い返しが古臭ぇ!」
「なんですって、このひょろひょろ!」
「あー? にょろにょろっ?」
「バッカじゃないの!? あんたなんか……」

何か別の言葉で言い返そうと口を開いたら、ぽん、と頭に手を置かれて言葉を飲み込んだ。