ちょうど他のパートも一区切りついたのか、一瞬静まり返った空気に自然の風の音が聞こえてくる。
遠くに山並みが連なり、霞む雲。
けれど高校の近くは程よく都会の、中途半端な風景。
でも、それが違和感なく溶け込むのだ。
発展していく様を見ているような、けれど息が詰まるほどの都会じゃない。
綺麗だなって、思う。
「私、歌をうたうのも好きですが、この景色を放課後に見る事が出来るっていうのも合唱部に入って嬉しかったことです」
嬉しそうに目を細めて笑うから。
私もつい嬉しくなって、大きく頷いた。
「私も! んじゃぁ、もっと堪能しようか!」
「え?」
くるっと室内に目を向けて、美奈を探した。
美奈は私たちの会話を聞いていたようで、苦笑するように口端を上げると傍のベランダに出る窓を開けた。
「ベランダで歌いたい人! おいで!」
そう声を掛けて、梶原を見る。
面倒くさそうに鍵盤に指を鍵盤に置くと、和音を奏でる。
私は上代さんの手を取って美奈に続いてベランダに出ると、大きく息を吸い込んだ。


