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シャッターの降り切った、暗い商店街を抜けて、あたしたちは地下鉄を目指す。
終電を気にしながら。
急ぎ足で。
遠くにある外灯に照らされ、長く伸びた影が、後から追いかけてくる。
「荷物、持とうか?」
あたしをいたわる、親切な友人顔のコウ。
「ありがと」
友人コウに向けて、あっさりした声で返す、あたし。
差し出したカバン。
「オシャレに見えて、意外と重いね」
「資料が入ってるから」
「会社の?」
「そう。月曜日のプレゼンのために、予習しとかなきゃ」
「カッコいいー」
「社会人ですから」
そんな会話をしながらも、ユウは、指を絡めて手をつなぐことを忘れない。
ここならば、誰にも見られる心配なんて、ないから……。


