春の訪れにあわせて買った、桃色のパンプス。 一人暮らし用の部屋の、小さな玄関で、あたしはそれを履くのにちょっと手間取る。 まだ硬く、足になじまない新しいパンプス。 コウは、あたしに靴べらと、それから肩を貸してくれた。 「ああ、マリエ待って……、最後に……」 桃色パンプスに両足をおさめた、あたしを振り向かせて。 かがむコウ。 目を閉じるあたし。 ふさがれる、唇。