グラスはふたつシンクに置いたまま。 歯を磨き、ダブルベッドにもぐりこむ。 「おやすみ」 「うん、おやすみ」 挨拶の、短いキス。 それからケイゴは寝がえりを打って、背中を向けたまま、眠りにつく。 完璧なまでのその背中は、あたしに、そびえたつ頑丈な壁を連想させる。 静かに、静かに過ぎていく、金曜日の夜……。