「そろそろ寝ようか、マリ」 「そうね」 グラスの底に残った、最後の一口を飲み干す。 カラリと、唇にあたる、氷。 あたしは鼻を通っていくライムの香りに目を細めた。 「そうだ、マリ」 「なあに」 「春物のコートが欲しいって言ってただろ? 明日、買っておいでよ」 組んでいた艶めかしい脚をほどき、ケイゴはソファから立ち上がる。 「うん……。そうする」 素直に頷きながら、あたしもその後に続く。