コウの新居は、都営三田線の板橋区役所前駅にあった。

三田線沿線にはいくつかの大学があり、そのせいで、埼玉にほどちかいこのあたりには、大学生が多く住む。

あたしとコウが知り合ったのも、大学で、だった。


「あたし、三田線てキライ」


「どうして?」


「好きな人が住んでたから、三田線上の駅に」


「オレのこと?」


「その人、いまはもう、そこにいないもの」


「なーんだー」


アハハ、と笑いあううちに、駅の入り口が見えてくる。





恋人のように手を絡め合いながら、こんな話ができるのは、相手がコウだからだ。