コウの新居は、都営三田線の板橋区役所前駅にあった。
三田線沿線にはいくつかの大学があり、そのせいで、埼玉にほどちかいこのあたりには、大学生が多く住む。
あたしとコウが知り合ったのも、大学で、だった。
「あたし、三田線てキライ」
「どうして?」
「好きな人が住んでたから、三田線上の駅に」
「オレのこと?」
「その人、いまはもう、そこにいないもの」
「なーんだー」
アハハ、と笑いあううちに、駅の入り口が見えてくる。
恋人のように手を絡め合いながら、こんな話ができるのは、相手がコウだからだ。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
設定されていません
読み込み中…