ここだったら少し落ち着いて色々考えられるかな


人気のない廊下をゆっくり歩く

少し傾きかけた正午の太陽がなんだかしんみりとさせた


部室に着く前の廊下を曲がると人影が見えた

瞬間あたしは足を止めた


何だか懐かしいような 会いたかった…会いたくなかった…そこには
やっぱり愛しい君がいた…


『那智…』


壁に寄り掛かっていた那智がゆっくりと体を起こして あたしの方へと足を運ばせる


『ここにいたら何か会えるような気がした』


『………』


『雛に 会える気がした』


確認するかの様に那智はあたしにもう一度言った
だんだんと近づいてくる那智の姿が何だか眩しく見えて目を細めてしまう


あたしの前まで来ると那智はフッと笑ってあたしの右手をそっと握った

その那智の動作にあたしは何だか温かさを感じて笑ってしまった

『何で笑ってるのさ?』


『那智が笑ったから』


『ハハっ…ねぇ雛?俺の話し聞いて欲しい』


コクン…
今 那智の話しを聞かなければいけない気がした
今 那智の話しを聞きたかった

あたしは一度大きく頷いて那智をまっすぐと見た