君色に

那智がまだ時間あるとか ブツブツ言っていて 何するわけでもなくしばらく街をフラフラしていた


夕方になって軽く食事をし 何処へ行くの?と聞いても『行ってからのお楽しみ』とだけ言って教えてくれない
那智が一度家に寄りたいと言ったので 那智の家へと向かった

角を曲がって那智の家が見えてくると那智の足が急に止まった
不思議に思い那智の目線を追うと

ッ…

那智の彼女が…そこには立っていた


これってヤバイんじゃ…彼女はゆっくりと歩いてきて あたしをチラっと見たがすぐに那智の方に向き直った


『なるほど…お互い様ってわけ?』

彼女は冷静に口を開いた
誤解だと言わなくちゃ でも 予想していなかった出来事で 緊張しすぎて言えない…


『だったら何?お前が望んだ事だろ?』


何? 状況がよく理解できない 那智は否定しない


『那智は何も分かってない!もういい。バイバイ』


それだけ言うと彼女は言ってしまった


『那智!追い掛けて!』


やっと出た言葉 だけど那智はあたしの言葉には 反応せず 『ちょっと待ってて。チャリ持ってくるから』 それだけ言って那智は家に入って行った


何だかそれ以上言ったらいけないような気がして 何も言えなかった

乗ってと言われ あの後の事で少し気が引けたけど 早くと促され渋々 自転車の後ろに乗った


何だか坂道ばかりで 大丈夫かな?と思ったけど それを見透かされたのか『降りるなよ』と那智に先に言われてしまい あたしは黙って那智の背中を見つめていた


しばらくすると 高い丘に着いた

こんな所あったんだぁ…


『こっち!もう少しだから…ん』

那智は手を延ばした あたし今この手を取っていいのかな…

グィっ
『キャっ!』


『行くぞっ!』


那智はあたしの手を引っ張って歩き出す