定義はいらない

手首にハサミの歯を持っていく。

手首に歯を置くと

金属の冷たさが私の体温を奪う。

私は何をしようとしているのか。

私はあの男のために死のうとしているのか。

私が死にたい理由は本当にあの男が原因なのか。


なんでこんなことになったのだろう。

私は何か悪いことをしたのだろうか。

私を裁けるのは

太朗ちゃんの奥さんだけだ。


いっそのことバレてしまえばいい。

バレて、私のうちのドアを蹴破って中に入り

私を殺してくれたらいいのに。



私は本当にあの男のために死のうとしているのだろうか。



行き場を失ったハサミは

自慢の髪の毛へ矛先を向けた。