定義はいらない

ウェイターさんがカクテルを持って来てくれるまで

お互い無言だった。

私は慣れない場にいるため周りをキョロキョロ見回すばかり。


あの二人はカップルだな、

あの二人は年齢差ありそうだけど、もしかして不倫?

会社員同士でこんなところで飲んだりするんだな。

あの人の飲んでるお酒はなんだろう?


完全なお上りさん状態である。

25歳にもなってまともなバーにさえ行ったことないのだ。

連れて行ってくれた男性もいない。

頼んだら、今度亮ちゃんは連れて行ってくれるだろうかと考える。


亮ちゃんならきっと連れて行ってくれるはず。

今度頼んでみよう。


付き合いだしたばかりの彼氏を思いだして

私はふと罪悪感に苛まれる。


彼氏のいる身で彼氏じゃない男性と二人きりになるなんて…。

でも相手は仕事場の上司だし。

何も起こるわけないし。

適当に飲んで帰ればいいんだ。

これは、仕事だ仕事。



カクテルが届いて一口飲み干すといくらか緊張が解れる。

ちょっと濃い目のカクテルはすぐに全身の血管を拡張させて

気分をリラックスさせる。

ポッと身体が火照った瞬間、

「ねぇ、あの照明って女性器の形に見えない?」

一瞬、耳を疑う。