定義はいらない

「冷たっ!」

そう言って遥は少なからずショックを受けた顔をする。

「なんで別れたの?」

麻衣子が躊躇なく傷口に塩を塗る。


「さぁ?」

「『さぁ』って」

「だって分かったら別れてないもん。まぁ合わなかったんでしょ。」

私はジョッキに残ったぬるいビールを飲み干す。


「そりゃそうなんだろうけどさ。」

麻衣子は渋々納得する。


「じゃあ、今の相手は誰?」

デリカシーのない千香が聞く。

「職場の友達。」

本当のことを言えるわけない。

他の2人にならともかく。

遥には絶対に言えない。

携帯を閉じて鞄に閉まった。

この会を早く切り上げて

どうするにしろ早く家に帰らなければならない。