定義はいらない

夜勤が終わって家に帰って昼頃、意を決して松木先生にメールをする。

「今夜、電話します。」


そして、戦意を養うために眠った。



夢に太朗ちゃんが出てきた。

私の頭を撫でている。

痩せる前の太朗ちゃんだ。

ぽっちゃりしたお腹に

どっしりした腰に

目尻の下がった目。

「ごめん。一緒にはなれなくて。」

私は胸がいっぱいになる。

「いいんです。」

そう言って目を伏せる。

そんなこと望んでなかった。

ただ一緒にいられたらそれでいい。

ふっと砂嵐が太朗ちゃんを連れて行って消えた。


亮ちゃんが出てくる。

「杏ちゃん。」

「なに?」

堅く手を繋がれている。

「杏ちゃんといると最高に楽しいんだよ。でも何か違うんだ。」

「そっか。」

私も何か違うと思ってたよ。

でも、それでも頑張ろうとするのが『好き』って気持ちじゃないのかな?

私、頑張ってたよ。

亮ちゃんは私のこと好きじゃなかったんだね。

だって全然頑張ってくれなかったもの。


また、砂嵐が亮ちゃんを消す。

目の小さい松木先生が私を見ている。

ボディタッチはない。

「あのさ…。」

そこで目が覚めた。

携帯の着信メロディが松木先生からの着信を伝えている。

松木先生専用の着信メロディだった。