定義はいらない

「バカでしょ、これ。」

「うん。」

愛想笑いということに気付く。

「つまんない?」

「だってやること全部一緒だもん。」

「それ言っちゃったらおしまいじゃない?」

「見てて何が面白いの?」

「ん~。研究しているからね、俺は。」

「へぇ。」

研究している結果があれかと思うとちょっとがっかり。

「そのエネルギーと時間を違うことに
 費やせばもっと大きいことができるよ。」

「それ言っちゃうとなぁ~。」

「吉岡先生のこともそう思ってた。」

口が滑る。

酔っぱらっているみたいだ。

「吉岡先生?」

「そう。いつも下ネタばっかり言っててさ。
 エロいことばっかり考えてて、あの力を医学に費やせば
 ノーベル賞獲れると思ってた。」

「あの人はただのエロいおじさんなんだよ。口だけじゃない?」

口だけじゃない。太朗ちゃんは週に1回うちに来て私を抱いていた。

「そうかな。」

「そうだよ。」

「でも、看護師と浮気してたの私知ってるもん。」

「へぇ~。」

これ以上のワインはヤバい。

私はグラスをテーブルに置く。

埃をかぶったテーブル。

松木先生に女はいないようだ。