定義はいらない

病院の敷地内にその寮はあった。

一見して団地住宅のような寮は階段を登ると

カツンカツンと音が響く。

「何階?」

「4階。」

荷物は持ってくれていた。

「荷物重いでしょ?ごめんね。」

「ゴリマッチョだから大丈夫。」

一度も休まずに彼は上へどんどん上がって行った。

肩掛けカバンしか背負っていないはずの私の方が息切れしてしまう。

「ちょっと待って。」

というと

声をひそめて

「ごめんけど、静かに。」

と言われた。

やっぱり病院の寮に来るなんて悪かったみたいだ。

私は声ひそめて笑う。

悪いことって刺激があってとても楽しい。

玄関に入ると、そこには靴が乱雑に置いてあった。

「どうぞどうぞ。」

どうぞと言われても足の踏み場もない。

笑える。

「これでも片付けたんだけど。適当でいいから。」

私は適当に片足ずつ別の場所にブーツを脱いだ。