定義はいらない

「自分の車のケツ見るのってなんか不思議な気分だよな。」

ケツって…。

「確かにね。」

と興味のない返事をする。

そんなことを意に介さずに

「見て見て。」

とナンバープレートを指さす。

「あれ、俺の誕生日。」

「へぇ。あれ?来週じゃないですか?」

「そう。」

「言っておいてくれたら何か買って来たのに。
 何も準備してないですよ。」

実は知っていた。

キャリーバックの中に私が自分で包装したプレゼントが入っている。

「いいよ、いいよ。」

この人が喜ぶプレゼントを私が用意できるわけないのに。

「あれもお父さんからのプレゼントですか?」

「そう。親父から。」

この人は家族にも恵まれている。

なんだかとても羨ましくて、

松木先生にとても憧れた。