定義はいらない

ひとしきり食べて飲むと私は早く先生の家に行きたくなった。

本当は夕食後にバーに行く予定だったけれど

私は早く家に帰ってくつろぎたくなった。

「この後どうする?」

「もう帰りません?」

「やっぱりな。俺もバーって感じじゃなくなった。」

お代は松木先生が全て払ってくれてた。

愛想程度に財布を出したけれど

いらないと片手で制される。

ベンツを大学生でプレゼントされる男に遠慮する必要はないかもしれない。

私は財布をしまった。

2人で駐車場に向かって代行車を呼ぶ。

外はやはり寒い。

まだ、21時過ぎだというのに静まっている。

「そんなに高くなかったなぁ。しょせん田舎ってことだよな。」

この田舎を小馬鹿にした態度が松木先生らしいと思う。

東京のお坊ちゃん。

まさに絵に描いたようだ。

「先生、その『田舎』って言葉、この数時間で何回聞いたか分からない。」

「だってタクシーより代行の方が安いんだよ?
 人件費は代行の方がかかってるはずなのに。不思議じゃない?」

確かに…。ときどきまともなこと言うんだよな。

「だからやっぱ田舎なんだよな。」

ほんと数えておけば良かったと、私が後悔したところで代行車が着いた。

車二台に、2人。

確かに変だなって思った。