定義はいらない

お互いお酒もご飯も本当によく進んだ。

私は案外食べる性質なのだ。

特に隠してない。

「よく飲むしよく食べるなぁ。」

それ、よく言われる

と思いながら私はもう1杯ビールを注文する。

「大学生の時にデートで焼き肉は食べないって女の子がいたんだよね。」

これは遥ではない。

「それウブな子だったんじゃないの?」

「むしろ遊んでる感じの子だったけど。」

遥と私は内心そんな子のことを軽蔑していた。

男のために焼き肉を諦めるなんて馬鹿らしい。

私は今夜も松木先生に負けないくらいガツガツ食べる。

これで振られるなら仕方ないと思う。

「ふーん。俺なら一緒に焼き肉食べられる女の子の方がいいけどね。」

私の箸は0.5秒くらい止まってタンを捕まえた。

「どんどん食べな。」

そう言って再度タンを注文する。

「やっぱタン美味しいわ。」

私の顔が赤くなっているのはたぶん炭火が熱いからだと思った。