定義はいらない

「相性悪かったよね。」

「『相性』のせいにするんだ。自分の技巧のせいじゃなくて。」

本当にこの人は自信家でブレない。

「そりゃそうでしょ。」

松木先生のこういうところ、

本当に好きだ。


「それで、私は濡れない女のレッテルを貼られてたわけね。」

「口では経験ありそうなこと言ってたけど、
 意外に純なんだなって思ったよ。
 気持ちのない相手とはしないタイプなんだろうなって思った。」


ご名答。


「だから、俺とヤッていいのかな?って思ったけどね。」

「ヤるつもりなかったけど、流れで。」

「そんな感じだった。」

「黙ってたけど、私、スローセックスが好きだから。
 ちょっと松木先生のセックスは私には若すぎる。」

「ははは。まっ俺元気だから。」

私がスローセックスを好きなのは

太朗ちゃんがスローセックスだったから。


「まっ今度は何もなしに添い寝でもしよう。」

「松木先生の部屋にエロいDVDとかないかガサ入れしてからね。」

「ガサ入れしなくてもその辺にあるから大丈夫。」

「じゃあ、それ一緒に見て添い寝しよう。」

「そうしよう。」


やっぱり『友達』かもしれない。

松本行きの切符を取ったこの晩、私は久しぶりに薬を飲まずに眠った。