「お客さん、ところで今日はどんな植物をお求め?」

もともと花を買う気なんてなかったが、これだけ話をして買わないのは失礼かと思い、買うことにした。

「おまかせします」

シゲルの答えに、彼女は少し考えこむようにして言った。

「では、当店で一番きれいに咲く花をご用意させて頂きます」

彼女は再びカウンターの影に消え、一分もすると、大きな植木ばちを抱え、顔を出した。

「これは何?」

その植木ばちにはやはり花が生えていなかった。

「大丈夫。半年もすると綺麗に咲きますよ」