「唇がなかったんです」

シゲルは残念そうに俯いた。
何か言葉を話すのを、楽しみにしていたのに。

女は暫く目をぱちくりさせていたが、やがて何かを理解したように言った。

「なんだ。そんなの、当たり前じゃない」

えっ?

シゲルは疑問の声を上げた。

「お客さん、あれは人間じゃないのよ。植物なの。植物が喋らないのは当たり前じゃない。でしょ?」

あぁ、そうか。そうだった。

シゲルは納得し、店を出た。

最後に、「今なら返品も受け付けますよ」と言われたが、断った。