次の日、シゲルはあの花屋に向かった。

何が起こるか分からないので、コートのポケットに果物ナイフを忍ばせておいた。

店に入ると、女は『待ってました』とでも言うような顔でシゲルを迎えた。

シゲルはごくりと唾を飲み込み、少し狼狽えた。

「どういうつもりですか」

シゲルは言った。怒ったつもりだったが、その声のトーンは、『怒り』というよりも『脅え』というほうが合っていた。