翌日、慶志朗は、祖父・慶之丞(けいのじょう)の屋敷を訪れた。 嵩愿グループの会長兼ご意見番である祖父は、一族から絶大な信頼を得ていた。 殊更、直系の孫である慶志朗を可愛がっていた。 慶志朗も幼い頃から度々祖父の屋敷を訪れては、祖父母を慕っていた。 慶志朗は、執事に案内されて、神妙な表情で座敷に入る。 祖父母の好物である葛きりの箱を黙って差しだすと、 そのまま畏(かしこ)まって正座した。