「普段の私をご覧になられますと、

 もう二度とお逢いしていただけないのではございませんか。

 それでも、私は私でございますものね」


 桜池の桜が陽の光に輝いて、そよ風が桜の香りを辺り一面に運ぶ。


 桜の香りに包まれて、祐雫は、慶志朗への緊張感を解き放つ。


 慶志朗は、憧れの君には違いないけれど、

 祐雫にとっては背伸びをしても届かない殿方に思えた。


 ただ、この瞬間、慶志朗と過ごしていることが

しあわせであり、喜びに感じられた。