祐里は、愛らしい里桜のしぐさに瞳(め)を細めて、

祐雫の横に腰掛けた。


「里桜さんも心配してございますのね。

 祐雫さん、溜息ばかりおつきになって、

 恋をされたのではございませんか。


 今までお勉強のことだけで

 頭の中がいっぱいでございましたのに、

 そのようなお年頃になられたのでございますね」


 祐里は、祐雫の髪を撫でる。


「母上さま……」


 祐雫は、頬を紅潮させて恋する瞳を祐里に向けた。


「母上さまは、このような気持ちになられたことが

 おありでございますか」


 祐雫は、真剣な表情を募らせる。


「ええ。

 父上さまが都の学校にいらっしゃった時は、

 悲しゅうて涙が止まりませんでした。


 休暇で帰られて、

 再び都にお戻りになられる時は、

 尚更淋しゅうございました。


 今想い出しますと懐かしい限りでございますが……


 ほんにその時は、お慕いする父上さまのことで

 胸がいっぱいでございました」