慶志朗は、噂とは正反対で、 可憐な雰囲気を持ち合わせた祐雫の瞳の中に 聡明さを認めていた。 (まさに深窓の令嬢というに相応しい……) 「また、明日もいらっしゃると よろしゅうございますね。 可憐でありながら、 光り輝く華やぎをお持ちのお嬢さまでございます。 詩乃は、一目で好きになりました」 詩乃は、ご機嫌な慶志朗の顔を意味有り気に覗き込んだ。 詩乃は、夏のひと月の間を幼い頃から 慶志朗と過ごすにつけ、 僅かな表情からでも、 気持ちが手に取るように分かるのだった。