祐雫の初恋


「桜河電機のお嬢さんのようです。

 偶然に通りかかったので、

 お茶に招待しただけです。

 突然の雷に動揺されていたので、

 送って差し上げただけですから……。

 この香りは、桜の香りでしょう。

 一緒に居る時には気付かなかったけれど、

 桜河のお嬢さんに相応しい香りですね」


 慶志朗は、別荘の扉を開けた瞬間に桜の香りを感じていた。


 今思えば、祐雫は、森に人知れず咲く

淡紅色の華やかな八重桜の雰囲気を

持ち合わせているように思えた。