「ただいま帰りました」 慶志朗は、テラスから続いている居間へと入る。 「坊ちゃま、お帰りなさいませ。 お部屋がとてもいい香りでございましたので、 風を通さずにそのままにしてございます。 どちらのお嬢さまでございますか。 坊ちゃまが別荘にお客さまをご招待されるなんて 初めてでございますものね」 別荘に帰ると詩乃がにこにこ笑顔で、 待っていたとばかりに話しかけてきた。 慶志朗が祐雫を送って帰ってくるまでに かなりの時間がかかっていたので、 興味津津の面持ちだった。