「虹は、龍の化身とされていますが、 美しい虹は、龍神さまからの贈りものです」 慶志朗は、虹の由来を祐雫に語る。 祐雫は、夢心地で、慶志朗の瞳を見つめ返した。 雨上がりの風が爽やかに 慶志朗と祐雫を包みこんだ。 慶志朗の白いシャツと 祐雫の白いワンピースがスクリーンとなり、 七色の虹を浮かび上がらせていた。 二人は、虹が薄れて見えなくなるまで、 風景に同化するかのごとく佇んでいた。 二人が佇む場所の時間(とき)は、静止して、 静寂に包まれていた。