空が次第に明るくなるとともに雨音が止み、 森には涼しい風が渡り、 小鳥のさえずりと蝉の声が戻ってきていた。 「もう、大丈夫でしょう。 あまり遅くなると東野の方が心配されるといけないので 送って行きましょう」 「ありがとうございます。 はじめてお会いしましたのに 大変失礼をいたしました」 祐雫は、 (いつまでもこのままでいたい) と思いながら、 慶志朗の広い胸から顔を離して、 深々とお辞儀した。