「藤原さま、光栄に存じます。


 どうぞ機会がございましたら、

 お声をおかけくださいませ」


 祐雫は、真実の突然の口づけにドキドキして、

思わず椅子から立ち上がる。


 狼狽して立ち上がったことを真実に知られないために


「あちらで、父が呼んでおりますので、ごめんくださいませ」


と、こころの動揺を包み隠して、優雅にお辞儀した。


 
 祐雫は、心細い気持ちになりつつ、

会場の人波から、光祐と優祐の姿を見つけて、ほっとする。


 
 晩餐会での優祐は、普段の優しい表情が凛々しい表情へと変わっていた。

 
 祐雫は、優祐の成長に羨望のまなざしを向けて、

男女の違いをまざまざと感じていた。