祐雫は、突然の真実の言葉が、よく理解できなかった。 (先程お逢いしたばかりでございますのに…… 藤原さまは、私をおからかいでいらっしゃるのかしら) 祐雫は、驚きで言葉が出ずに、 真実の心中を探るように、真剣なまなざしで顔を見つめた。 「恋愛に、はじめても何もありせん。 ぼくは、祐雫さんに魅せられたのです」 こういう場合の対処法を祐雫は、学習していなかった。 (純文学では、どのように切り返していたかしら) 真実は、祐雫の腕を取り、長手袋の上から、手の甲に口づけた。