「今宵の晩餐会は、仕事色が濃くて、少々退屈でしょう。 テラスで、演奏会が始まる時間なので、参りましょう」 真実は、躊躇(ためら)いなく、祐雫に手を差し出す。 祐雫は、好印象の真実に安心して、手を預けた。 「さぁ、どうぞ」 真実は、隅の椅子を引いて、祐雫に勧める。 「ありがとうございます」 祐雫は、優祐や久世家の従兄以外とは、若い男性と二人だけで、 話をすることは殆どなかった。 テラスには、「献呈」の曲が軽やかに演奏されていた。