「ところで、慶志朗とは、
お会いになっていらっしゃるの」
麗華にとって一番聞きたくないことであり、一番聞きたいことであった。
「ひと月前、
偶然に学校の帰りにお会いして、
自宅近くまで送っていただきました」
祐雫は、正直に麗華に答える。
「それからは、会っていないの」
「はい」
麗華は、毎週末のように琳子といっしょに様々な所に
招待してくれた慶志朗のことだから、
祐雫とも再三会っているものとばかり思っていた。
(ただの慶志朗の気まぐれかしら)
と疑いながらも、
その反面、良家の子女とは異なる祐雫の魅力を感じていた。
(いいえ、
慶志朗のことだから、
この不思議な娘に興味を持たない訳がないわ)
と考えた。
「麗華さま、あちらの木陰のベンチに参りましょう」
祐雫は、麗華の手を取って、ベンチへと導く。
麗華の美しい手に触れた祐雫は、嬉しさでドキドキしていた。

