「森の妖精か…… 詩乃さんも上手い表現をしますね」 慶志朗は、思わず微笑んでいた。 祐雫は、テラスで本を読んでいた慶志朗が ふと視線を向けた森の中に突然現れた。 緑の森を背景に白いワンピース姿の祐雫は、 まさに森の妖精を思わせた。 風に揺れる翠(みどり)の黒髪は、 森の樹木を映し込んだようだった。 「白いワンピースが妖精の羽のようで、 思わずお誘いしていました」 慶志朗は、森の深緑色を湛えた祐雫の瞳に惹かれて、 真っ直ぐに見つめた。