刑事さんの質問に舞ちゃんが、たまにあたしが答え続ける。
「──こっからは昨日の事になるのか。マンションの管理人の話によると、大森さんはエレベーターに乗るまでは別段変わった様子はなかった。その後の事、聞かせてもらえるか?」
「エレベーターを降りて、高岡さんの部屋の前を通り過ぎようとした時、ドアが開いて中に引きずり込まれたんです。
それで、ナイフを付きつけられて、歩けって脅されて、あの部屋まで連れて行かれました。
それから、ベッドに押し倒されて、腕を切られました」
舞ちゃんが右の二の腕をさする。
「このまま殺されるのは嫌だったので、壁を蹴り続けたんです。
そしたらお腹を切られて……」
「壁を蹴ったのは、隣に人が居たのを知っていたからか?」
「あの部屋、空き部屋の隣でしたよね?入居者がいる、というのはさっき瑠稀ちゃんに聞いたばかりだったので……。ただの悪あがきです。運が良かったんですね」
そう言って舞ちゃんは苦笑した。

