「あと、壁を蹴るの、やめてもらえませんかね」 「っ……。すみません」 高岡さんはちらりと自分の背後を見て、ぺこりと頭を下げた。 そして、話は終わりだと言わんばかりにドアを閉めようとする。 そのドアを空木さんの前に入った宮間さんが止め、訝しそうに眉をひそめる高岡さんに口を開く。 「失礼ですが、女装の趣味はおありですか?」 その言葉に、小泉さんも空木さんもあたしも、高岡さんも声を上げる。 「は?」 「え?」 「へ?」 「はい?」 唯一驚かなかった東屋さんが一拍遅れてああ、と小さく呟く。