「はい。どっかのホストみたいでバカで、金持ちのボンみたいな所長と頭に血が上りやすい所員がいる事務所と違い、みんな優しかったので」
笑顔でそう言うと、白兎が頬を引きつらせた。
「……金持ちのボンって、俺の事か?」
「ホストみたいでバカな、が付く金持ちのボンならあなたの事です」
「何で解ったんだ?」
一瞬黙った後、不思議そうに白兎が言う。
「だって、事務所のソファーとかが高そうだし、こんなバカっぽそうな所長に(性格が難アリっぽそうだけど)あんな美人とか、(頭に血が上りやすいけど)屈強そうな大男とか雇えなさそうだし、我が儘そうだし……って、え?マジで金持ちのボンなの?」
白兎の言葉をスルーしそうになる。
適当に言っただけなのに、本当にボンだったとは。
エレベーターが軽い音を立てて止まり、白兎が何とも言えなさそうな顔で降りる。