空は厚い雲に覆われているのか。
外灯のない暗い道になっても、星は一つも見えなかった。
ただ俺のはいた白い息が、その闇に吸い込まれていくのだけが見える。
明日はきっと、ホワイトクリスマスになるだろう。
…まぁ、俺にはなんも関係ないけどね。
バイト先から歩いて10分のところに俺の住むマンションはある。
1階が大家である佐々木さん夫婦が営むパン屋で、その上が賃貸になっている。
2・3階あわせて部屋は6部屋しかないけど、5年前できたばっかだからまだ外観も新しい。
白を基調とした清潔感溢れるその見た目に惹かれ、俺がここを決定するのにそう時間はかからなかった。
佐々木さん夫婦はすごく気さくで明るくて、当時高校生でこの街にきたばかりの俺にとってはめちゃくちゃ頼もしい存在だった。
それは、今も変わらない。
2人は俺にとって、兄貴や姉貴のような存在だ。
